香典とは、日本の葬儀や法事などで、故人やその遺族に対するお悔やみの気持ちを示すために、金銭的な贈り物として贈られるものです。一般的には現金を封筒に入れて渡されますが、その金額や入れ方には、一定のマナーや相場が存在します。
今回の記事では、香典の相場について詳しく解説します。香典の相場には、年代や地域、葬儀の形式などによって異なる傾向があります。また、相場がある程度決まっている場合でも、その金額を守ることができない場合もあります。
香典を渡す際には、入れ方にも注意が必要です。封筒の種類や書き方、細かなマナーがあります。また、香典を渡すタイミングや方法にも気を配る必要があります。
さらに、今回の記事では、香典の書き方についても解説します。香典袋には、必ず特定の文字が書かれている必要があります。また、その他にも、書き方には決まりがあるため、事前に確認しておくことが大切です。
香典は、故人やその遺族に対するお悔やみの気持ちを示すために贈るものです。そのため、相手にとって負担にならないよう、相場やマナーを守りながら、気持ちを込めたお悔やみを伝えることが大切です。本記事を参考にして、正しい香典の贈り方を身につけてください。
香典の相場の金額は?年齢や立場でわかる香典相場を徹底解説
なんの前触れもなく突然訪れる知らせ。それがお葬式のお知らせですね。
身内、友人、会社関係と、どの関係からその知らせが来るか、誰にもわかりません。もちろん、来ないに越したことはないのですが、人として生きている以上どうしても避けられないことでもあります。
そんな突然の出来事の代表でもあるお葬式の中でも、特にどうすればいいか迷ってしまうものの中に香典の金額があります。表現は端的ですが急な出費となりますし、相手方への配慮や周囲との兼ね合いなどで迷ってしまうケースが多いようです。
ここでは、急だからこそ迷ってしまう香典について解説していきたいと思います。
香典額は多ければいいわけではない
そもそも香典は、悲しみのうちであるにもかかわらずなにかと慌ただしい遺族に代わって近所の方が行っていた食事の用意が形を変えたものです。つまり、お通夜から葬儀終了まで大変な遺族の負担を少しでも助けるために用意されたものと考えていいでしょう。
とは言え、いくら近しい・親しいからといって遺族が恐縮するほど高額な香典を用意する必要はありません。
これは、故人に近しい方の弔意を身内以外の人間が越えるのは失礼にあたるという、昔から受け継がれているに考え方によるものです。結婚式で招待客が新婦より派手なのは失礼とされている慣習に近いものと思ってください。
中身はダイレクトにお金です。あまり多額なお金を近しくない方から頂くのは遺族としても気を遣わせてしまって申し訳ないと思ってしまいます。ゆえに、明確な相場は難しいところですが、ある程度のボーダーラインは押さえておくことをお勧めします。
香典のボーダーライン
では、そのボーダーラインとはどれぐらいなのか。昨今では風習の変化に伴って香典額も変わってきてはいますが、昔からの慣習に従う地域であったり、特殊な儀礼のある地域であったりと特別な場合を除けばおおむね値段はそう違いも変化もありません。
ですが、ひとつ大きな指標として「その土地に通夜ぶるまいを行う慣習があるかどうか」の違いがあるといわれています。 通夜ぶるまいとはお通夜の席で遺族が弔問の方を招いて会食の席を設ける慣習ですが、大まかに分けると東日本は通夜ぶるまいの習慣があり、西日本はその習慣がない傾向にあります。筆者の住まいは四国地方ですが、四国は弔問の方へのふるまいの席は基本設けない傾向です。
ただ、同じ東日本でも静岡などでは行われず、逆に西日本でも京都は行われるというように、都道府県別で細かな違いがありますので、お住いの地域に準じて調べるとよいでしょう。
そしてこの通夜ふるまいがあるかないかでお香典の基本の値段が変わってきます。会食の席を設けるということは、遺族の負担も増えます。その負担を軽減するためと考え、通夜ぶるまいのある地域ではその費用も含めて最低額が5,000円から、ない地域では3,000円からというのが昨今の基本額と考えられます。
年代 | 地域 | 会社関係 | 友人関係 | 身内 | その他(町内会等) |
---|---|---|---|---|---|
20代 | 西日本 | 3,000円~5,000円 | 3,000円~10,000円 | 5,000円~ | 3,000円~5,000円 |
東日本 | 5,000円~10,000円 | ||||
30代~40代 | 西日本 | 5,000円~10,000円 | 5,000円~10,000円 | 10,000円~ | |
東日本 | |||||
50代~ | 西日本 | 5,000円~10,000円 | 5,000円~10,000円 | 5,000円~ | |
東日本 |
立場による香典の金額の違い「会社関係編」
地域の基本額をふまえ、実際にどれくらいのお香典を用意したらよいか見ていきます。大切なのは、あなたが今回参列する葬儀はどなたの葬儀なのかということです。
まずは会社での付き合いのある方に関するお葬儀の場合。あなたにとって故人がどういう立場でどのような関係があるのかで変わってきますが、大手企業など会社によっては慶弔費として一律〇〇円と決まっている場合がありますので、その場合はそれに従います。
それとは別に個人的に香典を用意する場合は、故人や遺族とのお付き合いの深さによって変わります。例えば親しい同僚の方のご両親やご家族が亡くなった場合、故人に直接お世話になっているということであれば1万円、そうでなければ5,000円といった具合です。
また、あなたがまだ新入社員であったり年齢が若かったりという場合は、5000円未満でも構わない風潮があるようです。その場合は全国的に見て、だいだい3,000円ほどです。
立場による香典の金額の違い「友人編」
次はご自身の友人関係の葬儀に際するお香典の値段です。これもほぼ会社関係の方に個人的に出す金額と同等に考えて問題ありません。
友人自身が亡くなった際には5,000円〜10,000円、友人の家族が亡くなった際には5,000円が全国的な平均です。
通夜ぶるまいのない西日本では、友人の家族だと3,000円にするところも少なくありません。特に参列するのは友人の御両親の葬儀が大半かと思われますので、友人との付き合いによって決めていくと良いでしょう。
友人のご両親であっても、祖父母や兄弟であっても、あなた自身が家族同然に懇意にしてもらっていたのであれば5,000~10,000円前後が適しています。
立場による香典の金額の違い「身内編」
それでは家族や親戚などといった身内が亡くなった場合はどのくらい用意すれば良いものでしょうか。一言に身内と言っても、あなたから見て故人がどの立場であるかによってこれもまた変わってきます。
まず故人が自分の祖父母、または叔父(伯父)さん、叔母(伯母)さんの場合は10,000円前後が大半です。
また、叔父(伯父)さんや叔母(伯母)さんは場合によっては遠方で付き合いが疎遠になっている場合などもありますので、その場合は参列せずに弔電とお供え物を送るに留めることも可能です。
ご自分で選んで送るのもいいのですが、葬儀場によっては提携先の業者がある関係で他店からの持ち込みを禁止しているところがありますので、参列している親戚を通じて葬儀場に直接どう言った品物何円でがあるのかを問い合わせて決めることをおすすめします。
次に故人が自分の兄弟姉妹や両親などといった家族であった場合(義理も含みます)、あなたが喪主あるいは喪家であるか否かが判断のカギです。
喪主・喪家というのはハッキリ言うと葬儀を出すにあたり支払いの主体となる人・家ですので、香典はむしろ頂く形です。しかしあなたが喪主でなく、さらに結婚や独立して家を出ている場合はやはり喪家とは別の家の人、という立場になりますので香典の用意は必要となってきます。
その際の金額は概ね10,000〜50,000円程です。この値段の開きは一体何なのか、後ほど述べますが、あなたの年齢によっての差だとお考えください。
香典の金額は年齢で変わる?
どの関係の葬儀であっても、あなた自身の年齢によって香典額は変わってきます。これは簡単に、20代のうちは社会人になってまもないなどの理由から収入が安定してない、あるいは少ないと考えられているためのものです。
会社関係の葬儀に関してはその辺は特に重要視され、入社間もない社員の香典は3,000円からと定めている企業が多く見受けられます。その後入社年数が経ってから、みんなと同じ金額に合わせていくことが多いようです。
友人関係はまた少し勝手が違うところですが、それでも年齢の若い人は3,000円前後に留めるケースが多く見受けられます。
そして身内ですが、最低金額ラインこそ会社関係や友人関係と同じと言う訳にはいきません。ただしやはり年齢が若いとたとえ夫婦であっても10,000円あたりとするところが多いです。
また身内の場合30~50代くらいまでは社会的にも経済的にも1番安定している年代ということもあるので、上限が50,000円ほどになります。特に夫婦連名で用意する香典の場合は20,000〜50,000円ほどでお包みするのが平均的です。
ちなみに、地域によっては新生活という立場を設け、新卒や結婚したての若い方々からのお香典を半額以下にしようという動きが根強く残っているところもあります。その場合は通夜ぶるまいなし、葬儀が終わったあとのお返しも控えめにするという仕組みです。主に現在でも関東方面で見られる習慣です。
近年は香典を受け取らない葬儀も
葬儀は、本当に予定のない儀式です。突然知らせを受けるものですから、それに伴う出費も突然のものであり、どうすれば良いか迷われる局面も多々遭遇します。そうした中で覚えておくべきことは、最初にも述べた通り多額だから良いという訳では無いことです。
遺族にしてみれば、忙しい中で急な知らせにも関わらず駆けつけてくれたことが嬉しい反面、香典で気を使わせて申し訳ないと思うことも多くあります。
その思いゆえか、近年では家族のみの葬儀が増え、なおかつ香典辞退という流れも増えてきました。
後々のお付き合いが疎遠になってしまう上に、周囲の方の気持ちを煩わせないようにと言う故人の、また故人亡き後はその地元に誰もいなくなるご当家の、それぞれ意思として葬儀場側も受け入れております。
そういう葬儀に参列した場合もまた戸惑うと思いますが、その際は故人や遺族の意思と受け止め、お香典を出さずに参列し、心を落ち着けてお焼香などをなさってください。それだけでも十分な供養と言えるでしょう。
香典は故人との繋がりにそって無理のないように
葬儀というものは悲しいものです。その悲しみの中で、故人のご家族はなにかと忙しく慌ただしく過ごさざるを得ません。そうした状況において、参列者ができることは少しでも疲れの出ないようにと気遣うことです。お香典もまた、そのうちの一つと捉えます。密葬や家族葬が増え、葬儀の価格も昔に比べるとぐっと下がってはきましたが、それでも家族にすれば大きなお金が動くことであり大変なことです。
その大変さを少しでも和らげるものの一つがお香典です。 お返しを気にすることなく、どうか少しでも足しにしてください…という思いで金額を決められるといいでしょう。その為にも多くを包みすぎることなく、しかしご自身が無理をすることの無い金額をお包みするように心がけてください。
また、今回述べました相場価格はあくまでも一般的な価格であり、細かな設定は地域によって変わってきます。ですから、共に参列する方や地元で参列する方と示し合わせて決めるのも一つの方法です。
他地方の葬儀に参列するにあたって不安な点や不明な点がありましたら、参列する予定の葬儀場に問い合わせたりしてから検討してください。
香典の金額の書き方
次に香典を用意するときにふと迷ってしまう「金額の書き方」について詳しく解説していきます。
そもそも金額を書く必要がなぜあるのか
お香典を用意する際の金額の書き方について、と冒頭に述べましたが、そもそもなぜ金額を明記する必要があるのかという疑問を持っている人は少なくありません。かくいう筆者も仕事柄、友人に聞かれたことがあります。
正直、自分がいくら包んだかなんて人に知られたくない…と、プライベートなところが暴かれるような気がして抵抗があるように思っている人がいるのも事実です。
しかし、これは書いてもらわないと実はご遺族・特に喪主やその家族(ここでは喪家(もけ)と表します)が困ります。というのも、葬儀に参列した方へお返し、いわゆる香典返しと呼ばれるものを用意するのが喪家だからです。
喪家はなにかと慌ただしいため、急なことなのに忙しい中来てくれた方へのお礼を当日の香典返しや四十九日のお返しに変えます。その中でも特に四十九日の際のお返しは香典の額に応じて準備しなければならないため、喪家はお香典の金額を把握する必要があります。
しかし、通夜から葬儀にかけて、またその後しばらくは喪家としてもとにかく慌ただしさが続きます。
そうした中でたくさんのお金の管理を行わなければならないので、できれば金額をわかりやすく一目で把握できるようにしておきたいところです。参列する側は、そのあたりを踏まえて金額の記入を心がけておくといいでしょう。
書き方に決まり?普通の漢数字を避ける理由と「金」の文字
それではいざお香典の金額を記入しようと筆をとって書き始める前に。日頃よく使う普通の漢数字での金額記入はNGであることを覚えておきましょう。
使われる漢字は「大字(だいじ)」と呼ばれる難しい漢数字を使います。その理由はずばり「金額の改ざんを防ぐため」です。
漢字ごとに詳しく述べていきますが、こと日本の漢数字、特にご祝儀やお香典に使われる数字は画数も少なく、縦線と横線の組み合わせだけでできている文字がほとんどのため、改ざんがしやすい部類の文字にあたります。
香典を持ってきた人や受付などで香典の管理をした人に疑いをかけるわけでは決してありませんが、大事なお金のこと。何かが起こってからでは遅いですので、正しい書き方を覚えておいて余計な騒ぎが起こらないように、そして喪家に余計な心配事を抱えさせないようにしましょう。
また、ご祝儀でも使われる「金〇〇圓」という書き方は香典でも当然必要です。
アラビア数字表記でいうところの¥マークの役割ですので、忘れないように書き込んでください。次のコーナーから、改ざん例とともに正しい金額の書き方をご紹介します。
金額の書き方 3,000円の場合
香典の金額は一般的には3,000円~10,000円前後が平均額です。
場合によってはこれ以上になることもありますが、ここからはあなたがごく一般の会葬者として葬儀に参列する場合を想定し、平均額内での金額の書き方を説明していきます。
まずは3,000円。若い方やご近所・町内会員といった血縁関係のない方や付き合いがさほど深くないのご葬儀で用いられる金額です。この場合、漢数字は「三」ではなく「参」を使います。
普通漢数字の「三」ですが、これは線を2本足すと「五」に変換できます。または上2本を消せば簡単に「一」に変えられます。今のご時世でなかなか現実的にはなさそうなことですが、そういった改ざんや書き間違いを防ぐために「参」を用いて「金参阡圓」または「金参阡圓也」と記入します。(「也」の記入については後述します)
金額の書き方 5,000円の場合
日本全国の一般会葬者が用意するお香典の中でも最も多く、全国的な平均額ともいわれるのが5,000円です。地域によっては5,000円が基本金額となるところもありますし、どこの地域の葬儀に参列するときでも特に問題のない、一番無難な額です。
その5,000円ですが、3,000円の「三」ほどではないにしろ改ざんが少し可能な文字です。
書き足しての改ざんは難しいですが、消すと「三」、あるいは「十」に変換できることが予想されます。(とはいえ、お香典袋は墨やインクを使って書くので、消すことによる改ざんはほぼ不可能に近いです。が、念のため。)
そこで「五」は「伍」という漢字を使い「金伍阡圓(也)」とします。
金額の書き方 10,000円の場合
5,000円に次いで包まれることの多い金額です。いわゆる社会的にも経済的にもそれなりに安定した世代の方が用意する金額でもあります。
しかし、数字の改ざんという観点からいうと、10,000円が実は最も危険な漢数字です。なぜなら「一」横一線のみですから、八以外は大体書き換えることができます。
「一」に線を足すだけで「三」「五」「十」…ざっと挙げただけでも、これだけの書き換えが簡単にできてしまいますので、10,000円をお香典として用意する方は絶対に「一」で記入しないように注意してください。 それではどのように記入するかといいますと、「壱」という漢字を使います。「金壱萬圓(也)」が正式です。
「千」「万」も「阡」「萬」に
ここまで、平均額における香典袋への金額の書き方を述べてきました。その中でお気づきになったと思いますが、〇千円、〇万円を「〇阡圓」「〇萬圓」と表記しました。
実は「千」という字も「万」という字も、消したり書き足したりしての改ざんが決して不可能なわけではない漢数字なのです。ですから「千」は「阡」、「万」は「萬」と記入します。
ただ、昨今ではこの漢字自体馴染みが薄いため、「千」「万」で記入する場合も増えてきました。特に頭の漢数字さえ正しければ真ん中は改ざんされてもすぐに気づくことができるのでさほど大きな問題にはならないのも事実です。
ただ、頭の漢字とのバランスもありますので、この機会に覚えておくとよいでしょう。
金額の書き方(おまけ) 100,000円の場合
100,000円という金額はまず一般会葬者は用意しない金額ですが、身内の葬儀となると用意しなければならない可能性もある金額でもあります。
この100,000円の「十」も、一ほどではありませんが書き換えが簡単な漢数字です。線を3つ足せば五万円に、下に少しカーブをかけた線でも書けば七万円に変更できてしまいますので、100,000円の場合は「金壱拾萬圓(也)」と書きます。「壱」を付けて書くのが大字を使う上での正しい表記です。
金額の書き方(おまけ) 20,000円の場合
結婚式ではタブーとされている2のつく金額(2,000円・20,000円)は、お葬式では特に問題はありません。
ですが、この「2」も1と同じくらい、改ざんが容易な漢字ですので注意が必要です。「二」の場合は「弐」と記入し、「金弐阡圓(也)」「金弐萬圓(也)」とします。
金額の後ろに「也」は必要?
冒頭から、金額の後ろに「(也)」と表記していました。金額の後ろにつける「也」という文字は、アラビア数字でいうところの「¥〇〇〇-」の「-」に当たりますが、也をつけなくてもよいというふうにマナー本などでも言われています。
これは昔の日本で使われていた「円」の下の単位(「銭・厘」)が今の日常社会では使われなくなり、円以下の改ざんが基本的に行われなくなったためです。つまり、「円」を書くことだけでこれ以下の数字はありませんよ、という意味合いを持たせることができるようになったというわけです。
ただ、書籍によっては10万円以上の高額なご祝儀・お香典には「也」をつけるようにと書かれているものもあります。理由としては高額ゆえに書き換えなどが生じるのを嫌うためとあります。
結論から言うと、「也」をつけることが古くから伝わる正式なマナーであることも、つけないことが近年のマナーであることも、どちらも事実であり正解ですので、「也」の字をつけるかつけないかはどちらを選んでも差し支えはないということになります。
つけなかったからといって必ずしも失礼にあたるわけではありませんし、つけたからと言って仰々しいわけでもありません。
正しいお香典の金額記入でご遺族の負担を少しでも軽く
大字を用いて金額を書くというのは、今の世の中では一部を除けば非日常的なことですが、いざという時のために覚えておいて損はないことでもあります。
冠婚葬祭、とくにお葬儀はその「いざという時」の最たるものです。一般会葬者として参列する側も慌ただしいものですが、ご遺族、特に喪家ともなるとその何倍も慌ただしく時間が過ぎていきます。
そうした中でのお金にまつわるトラブルは日常の何倍もの精神的ダメージになりますので、妙な事案が発生しないようにするための先人の知恵としてこの大字を使った金額の記入方法が今なお用いられているのです。
もちろん、昨今では葬祭会館での葬儀が主流ですし、香典管理も昔とちがい親族が行ったり、葬儀場のスタッフが代行で行ったりすることも増えてきましたので、自宅葬よりは他人の目もあり金額の改ざんといったトラブルはそう聞かれるものではなくなってきましたが、大事なお金のことですので念には念を入れてトラブルに発展しないようにしなければなりません。
また、決して少なくはないお金の整理を喪家の人たちはしなければならないのですから、少しでもわかりやすく、少しでも明確にしておいてもらえると、葬儀後の負担が幾分か軽くなります。
ゆえに喪家を気遣う上でも、参列者として金額の記入は心がけていただきたいことです。また、前もって香典袋に金額を記入するということは、自分自身も金額の入れ間違いを未然に防げるというメリットがあります。
改ざんの心配のないように正しい金額をきちんと記入することは、参列者にとっても遺族にとっても円滑に葬儀から四十九日までを進める大切なことなのです。この機会にぜひ覚えておいてください。
香典のお金の入れ方
お香典を用意する時、不慣れゆえにいろいろなことで迷ってしまいます。
その中でも特に迷ってしまうのが「香典用のお札の入れ方」です。表裏、上下、どんなふうに入れたらいいのか…急なことだからこそ、かなりの確率で迷う方が多くいらっしゃいます。
いざという時のために、お札の入れ方を覚えておきましょう。
意外と迷う!お札の表と裏
お札を用意して、さあ香典袋へ…と、その前にお札の表と裏を改めて把握しておきましょう。
昨今では表裏を気にしないという声も少なからず聞かれていますが、お香典に限らずお見舞いやご祝儀などでお金の受け渡しをする際にも活用できますので、この機会に覚えておいてください。
お札には人物の顔がある面とない面があります。人物のある方が表、ない方が裏です。つまり、人間と同じで顔が見える方が表、見えないほうが裏、という風に捉えると覚えやすいかと思います。
香典袋に入れる前にお札の状態を確認する
必要な金額のお札が用意出来たら、いよいよ香典袋へ。その前に、お札の状態を見直してみてください。そのお札は折り目のない新札ではありませんか?
逆に、あまりにしわが付きすぎていませんか? まず、折り目のない新札は香典にはNGです。 新札は本来、結婚式をはじめとした予定のわかっているお祝い事の際にあらかじめ用意して使われるものです。しかし葬儀は突然のことであり、誰もが予想できない不幸ごとです。
この観点から、葬儀に新札のお香典を入れるということは「相手の不幸を予想していた・待っていたのではないか」と捉えられます。それゆえお香典は急遽用意したという意味も込めて旧札あるいは少し使い古したようなお札を使います。
とはいえ、たまたま新札しかなかったり、用意したお金がなぜか新札だったりという状況もありうるかもしれません。そのような場合は新札の中央で構いませんので、下記写真のようにひとつ折り目を入れておきます。
また、いくら使い古したお札が良いからと言ってあまりにもしわしわのお札や汚れたり破れたりしたお札を入れるのはご遺族に失礼です。ある程度使った感じのある程度のお札でかまいません。
香典袋に入れる前にお札の向きを揃える
お札の状態を見直したら、次はお札の向きが揃っているかどうかを確認します。 一万円や五千円など一枚のお札で済むものはいいのですが、複数のお札を入れる場合にはこの向きを揃えることが大切です。
上記の写真のように一枚目は顔の部分が上、二枚目は下、三枚目に至っては裏向き…これでは、後々ご遺族がお金を数えるときに金額が見えづらくわかりにくくなってしまいます。
そのため、一枚目を表向きにしたら残りもすべて表向き…というようにお札の向きを揃えておきます。こうすることで金額も素早く把握することができ、お香典額の確認がスムーズに進みます。
香典袋にお札を入れるときの向きについて
さて、いよいよお香典にお札を入れますが、ここにきて最大に迷うポイントが現れます。
それは、お札をどうやって、どんな向きで入れればよいのか。表と裏、どっちをどう入れるのか、お札の顔は上か下か…など、意外と迷ってしまうポイントが実はここに一番集約されています。
実のところ、お札をどのような向きで入れなければいけないかということに関しては厳密な決まりはないとされています。ですが一般的な入れ方が一応は存在していますので、今回はそれを押さえておくようにしましょう。
お札の上下は表の顔の部分が袋の下に来るよう、裏表は袋の表側に対してお札の裏側が来るようにします。理由や由来は諸説あるかと思いますが、お札の顔を見えないようにすることで悲しみに顔を伏せている様を表現する、という慣習が挙げられます。
また、顔の部分を下にすることで封筒から取り出したときに算用数字・漢数字両方での金額の表記が一番に見えるので、すぐご遺族に正しい金額を伝える役割となります。一枚のお札で済む金額の場合は、向きだけ正しくしておけば問題ありません。中袋の有無にかかわらずお札の向きは袋の表側に対してお札の裏側が来るように入れます。覚えにくい方は、封筒を開けて取り出す時にお札の金額表記(千円・五千円・壱万円)が見えるように入れる、と覚えておくとわかりやすいです。
香典袋の閉じ方
お札を入れて香典袋を閉じるとき、裏側の重なる部分をどうすればいいの?という声もよく聞かれます。いわゆる外袋の「かぶせ」の部分のことですが、このかぶせ方を間違うと意味が変わってきますので正しく覚えましょう。
現金を入れたら、外袋を左→右の順でかぶせます。そのあと下、上の順で包み終えます。
かぶせの部分を下→上とすることで深く敬礼する形になる・あるいは悲しみを上から下へと流して留めないようにする、といった意味合いがあります。
これがご祝儀袋になると上→下の順で包みます。お祝い事なので上昇気流に乗る・あるいは受けた幸せを長く留めるという意味合いを持ちます。水引の部分がご祝儀と不祝儀で異なるのは知られた話ですが、見えない部分であるのし袋のかぶせの部分もお祝いかお悔やみかで包み方・閉じ方が異なってきます。
葬儀・不祝儀は「留める」のはご法度です。袋の包み方ひとつにもそういう意味合いが込められていることを覚えておき、正しい包み方でお悔やみの意を伝えてください。
お札を「人」に見立てて覚えてみる
香典袋へのお札の入れ方や向きについて述べてきましたが、これらはなかなか普段の生活では触れられない部分ゆえに忘れがちなことでもあります。では、どうすれば少しでも覚えやすいか。
ひとつに「お札を人に見立てて覚えてみる」というものがあります。先にお札の上下の向きについて述べた時に「顔を伏せる」という表現をしました。
人は涙を流すとき、悲しい時などは後ろ向きになり、顔を伏せて涙を流します。これをお札に置き換えてみます。
- 袋の表に対してお札の裏をむける → 後ろ向きになる
- 顔の部分を下にしていれる → 頭を垂れて悲しみに暮れる
ちょっと無理やりな部分もあるかもしれませんが、このように人の所作に見立てる形で覚えるといいでしょう。
また、お札の向きを揃えるということも人に見立てて覚えることができます。
人は列に並ぶとき、同じ方向を向いて並びますね。特に行事ごとや儀式ごとでは特にきちんと並ぶ整列の形をとります。お札も同じように整列させるのです。特にお香典は葬儀という儀式に供えるお金ですので、人と同様に整列させる…と覚えてください。
まずはお札の向きを揃えるよう心掛ける
香典袋に収める際のお札の向きについて述べましたが、事実これと言って明確に決まっているわけではありません。そのうえで、少しでも整えておくことはお悔やみの気持ちを誠心誠意伝えるということにつながると考えてよいでしょう。
その中でも特に、お札の向きを揃えておくことが大切です。心情的な理由もありますが、一番はやはり管理がしやすくなるからです。
普段の生活でも、小銭はともかくお札の向きが揃っていると気持ちよくスムーズに、なおかつ正確に管理ができます。管理という面では葬儀・とりわけお香典の管理は一歩間違うと日常生活の何倍ものトラブルに発展しかねません。
日常生活ではなかなか手にできない大金を管理することになりますし、千円~一万円とすべてのお札をしっかり数えなければならないのですから、金額が合わないとなると普段以上に大事になってしまいます。
そうしたトラブルを未然に防いでもらうために、参列者としての気遣いの一環としてお香典のお札の向きは揃えるように心がけることをおすすめします。
まとめ
本記事では、日本の葬儀や法事などで贈られる香典について、その相場や金額の書き方、お金の入れ方について解説してきました。
香典の相場については、年代や地域、葬儀の形式によって異なる傾向があります。一般的には、近年は3000円程度が相場となっていますが、地方や高齢者の葬儀、大企業や有名人の葬儀などになると、相場よりも高額な香典が贈られることもあります。ただし、相場を守ることができない場合には、自分が負担できる範囲で贈ることが大切です。
香典を渡す際には、封筒の種類や書き方、切手の貼り方、香典袋に書くべき文字など、細かなマナーがあります。正しいマナーを守ることで、相手に対して敬意を示し、慰めや励ましの気持ちを伝えることができます。
また、香典を贈る場合には、故人やその遺族に対する心からのお悔やみの気持ちを込めることが重要です。相場やマナーを守りつつ、自分の気持ちをしっかりと伝えることが大切です。
最後に、本記事を参考にして、香典を贈る際には相場やマナーに留意しつつ、故人やその遺族に対する心からのお悔やみの気持ちを伝えることができるようになりましょう。